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袖口はアールの付いたリブがアクセントに。
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着るほどに魅力深める、吊り編み生地の包容力
ふっくらとした、まるで手編みのような優しい質感。ヴィンテージマシンで編む「吊り編み」に、近年注目が高まっています。魅力は洗濯をくり返して身体になじんでゆくこと。古びるのではなく、自分らしくなってゆく。時とともに深まる魅力の秘密は、やはり古いマシンにあるようです。
ヴィンテージ編みで魅力深まる、長く愛用したいプルオーバー。
今年の新作は、いわゆるスウェット。パターンに拘り、立体的な丸みのある旬のシルエットにデザインしました。袖付けを、前はドロップドショルダー、後ろはラグランスリーブにしてアームホールをすっきりと。身頃裾両脇と袖口はアールの付いたリブ仕様でさりげなく細見せ。着るほどに、ディテールの魅力も深まります。
スローな時間の流れが、編み地に優しさを吹き込む
近年ますます人気の高まるヴィンテージマシンを使った吊り編み。こちらの製品を手掛ける和歌山のニットメーカー「アイガット」では、1990年の半ば頃、60年代に途絶えてしまった吊り編みを手探りで復活。オリジナリティが重視されるようになった国内外の市場で、ファッションのプロから高く評価され、徐々にファンを増やしていきました。吊り編みは、ニットのプロから生きている生地といわれます。洗濯をくり返しても堅くならず、着る人の体型になじんでフォルムを変える。製品はしっかりしていますが、着心地は緩やか。古びても魅力は褪せず、むしろ古くなるほどに個性が深まってくるのです。その理由の一つが、技術者が「1台ずつ性格が違う」という編み機の動きの曖昧さ。電動とはいえ、ほとんどが戦前に作られたもの。制御するのは人です。中には約100年前のものもあります。なので動き方も調子も、一つとして同じものはありません。もう一つの大きな理由が、一般的な高速編み機の約20分の1といわれる編み速度。スローゆえ編み目は空気を含みやすく、また気温や湿度の変化が、糸のテンションや歯車の動きに影響を与えることもあり、技術者が常に様子を見ながら稼働させています。つまり機械編みといってもハンドメイドという側面もあり、これが温もりある質感と表情を生み出しているようです。